実家の父の背中に潰瘍があることはずっと前から知っていました。
母がまだ生きていた頃は母に薬を塗ってもらうのを見ていましたし、
丁度お風呂上がりに出くわすと孫たちに薬を塗って欲しいと言っていましたから。
ただ、私自身が直接傷を見ることはありませんでした。
一緒に温泉に行った息子から「おじいちゃんの背中ひどいよ」と聞いた時に
様子を尋ねると「帯状疱疹の痕だし痛くも痒くもないから大丈夫」とのこと。
その言葉に納得して月日が経ちましたが、なんとなく引っ掛かりを感じていました。
昨年の夏、思い出してまた「背中どう?」と聞くと「変わりない」と。
つまり「変わりない」=「治っていない」ということです。
見せてもらうと「帯状疱疹の痕」レベルではない感じでした。
父に病院に行った方が良いし、自分で背中に薬を塗るのは無理だから
訪問看護のある病院を探して毎日塗りに来てもらおうと話し早速検索。
2日後に連れて行くことにしました。
ネットで探した訪問看護対応をしている内科クリニックでは
「これは内科で見られる状態ではないので」と皮膚科を紹介されました。
内科が終わったのが11時半頃だったのですが、
待ち時間が長く少し疲れている様子の父を連れて、車で10分くらいの皮膚科に移動しました。
夏休みで夫が一緒だったのが幸いでした。
皮膚科がお盆中でもやっていること、まだ午前の診療中であることを調べて、
滑り込むことができたのですが、
もし夫がいなかったら「今度にしよう」と父が言い出したと思います。
皮膚科の医師は長いことうーん、うーんと唸っていました。
「うちでできない訳では無いけど、検体をとって検査に出しても
返ってくるまで時間がかかってしまうから大きな病院に行った方がいい」
と国立病院を紹介されました。
内科で診てもらって抗菌薬を塗りにきてもらう程度と思っていたのですが急展開です。
直ぐに国立病院を予約、6日後に診察してもらうことになりました。
ところが次の日父から電話が。
「国立病院は大ごとだから行かなくていい。痛くも痒くもないし。」
こうなると厄介です。説得しても「行かなくて大丈夫だから」と私の言うことは聞きません。
長男が帰宅したタイミングで再度説得してもらいました。
「潰瘍が治らないと一緒に温泉へ行けないし」
唯一の男の孫である長男の話は効いたらしく、
渋々予定通り国立病院で診察してもらい、
受診から10日後に切開手術を受けることになりました。
局所麻酔だし、1時間くらいで終わる入院の必要ない手術なのですが
ただ、ここで問題だったのは血圧が高いことでした。
母が生きていた頃は母と一緒に通院し高血圧の薬を処方されていましたが、
母が亡くなってからは通院しておらず服薬も中止していたようで、
高血圧に対する対処を全くしていない状態でした。
国立病院を受診後に最初に行った内科クリニックに直行し、
手術することになったことを話し、高血圧の薬を処方してもらいました。
手術までには服薬のおかげで少し血圧は下がっていましたが、
高齢ということもあり、血圧を測りながら神経を使った手術だったそうです。
翌日、患部の消毒に行くと、家で毎日患部の消毒、薬を塗り替える必要があると言われたので
フルリモートだった妹が1週間泊まり込んでくれることになりました。
1週間後、抜糸のための診察。
手術をしてくれた医師は細胞を検査した結果、癌であったと告げました。
本人も家族も全くの予想外、汗管癌という比較的珍しい癌だそうです。
次は全身麻酔をして患部を大きく切り取る手術になりますが、
その前に88歳の父は手術ができる状態であるか調べなくてはなりません。
元々健康体で体力もあり夏前まではゴルフの打ちっぱなしに行っていたくらいの父で
通院するタイミングで車の運転はやめてもらいましたが、
それまでは一人で八ヶ岳へ行ったり、
母の実家近くの役所へ戸籍証明書を取りに行っていたくらいアクティブです。
手術するような大病を患ったこともありません。
血液検査、尿検査、MRI、口腔内検査の結果、
幸いにも手術は可能ということになりました。
ただ、口腔内検査で歯の根が3本残っていることがわかり、
しっかり留まっているので今回はこのまま麻酔をし手術しますが、
術後落ち着いたら抜歯してくださいとのことで1ヶ月後に予約を入れました。
病院の都合で2日前に入院し、当日は午後からの手術予定でしたが、
夕方、夜になっても病院から連絡がありません。
昨年の夏はまだまだコロナ禍で入院直前のコロナ検査もありましたし、
手術に付き添うような状況ではありませんでした。
ヤキモキしているところに妹から状況確認の連絡が来るし、
どうしたんだろうと思っているとやっと担当医師自ら
全て取り除くことができました、と電話がありました。
次の日お見舞いに行くと病棟の廊下でばったり父と遭遇。
麻酔から覚めた時は嫌な気分だったけれど、一人で歩けるしトイレにも行けるので
軽やかに院内を歩いている様子に拍子抜けしてしまいました。
その後1週間で抜糸、退院。
それからは1週間に1度の診察が2週間に1度、1ヶ月に1度になり、
何回かの検査でも異常はなく、今は3ヶ月に1度の診察になりました。
予定していた抜歯は術後体力が落ちたり、
全身麻酔からの覚醒がとても気持ち悪かったらしく、
何度も延期して、キャンセルしたら看護師さんから電話をいただいたり
(やはり抜いた方が良いと)6ヶ月後にやっと抜歯しました。
状況説明の紹介状を書いていただき、今はかかりつけの歯科クリニックに通院中。
3ヶ月に1度の国立病院の形成外科、2ヶ月に1度のかかりつけ内科(高血圧の薬のため)、
歯科クリニックの3箇所に行っています。
89歳で一人暮らしの父。
食事は月2回届く冷凍のお弁当14日分と週2〜3回徒歩で買い物へ行ったり、
ついでにヘアカットしたり、
本屋さんに寄って歴史小説や直木賞受賞作品を買ってきては読んでいて、
それなりに楽しく暮らしている様子ですが
人と会話することが少ないので、声が出にくくなっています。
通院は私が連れて行き、孫や妹家族が時々遊びに来ますが会話の絶対量が少な過ぎます。
せっかくお迎えしたロミィでは話し相手にならないようです。
同年代の人と話すことを目的にデイサービスに行ってみてはと勧めましたが気乗りしません。
ただ、もともとゴルフ好きなので地域のラウンドゴルフサークルへの参加は考えているそうです。
癌を患った89歳の一人暮らしというと、大変ね。一人で大丈夫なの?と聞かれますが
足腰、頭もしっかりしているので、年齢が行く程個人差があると感じます。
過度に手助けすると、子どもに負担をかけたくないと考える父なので
バランスをとりながら見て行きたいと思う、今ここです。